日本航空(JAL)の再生に係る倒産弁護士と呼ばれる瀬戸英雄を書いた本を手にした。私は会ったことがない弁護士だが、彼の所属した弁護士事務所とは関わり合いがある。不思議なもので、彼が弁護士研修仲間二人と立ち上げた最初の法律事務所とは再開発事業で関わり合いがあり、次に移った法律事務所は私が経営していた会社の顧問弁護士の事務所だった。その事務所から独立した次の法律事務所は知らないが、現在その後に合同した法律事務所は当社が管理するビルに長くテナントとして入居し、手狭になった為に近くのビルに移転したので満更知らない訳ではない。代表的な倒産弁護士の二人の内の一人が瀬戸英雄とのことだが、再開発で立ち退きを求めた法律事務所に居たとは知らなかったのは後の祭りだ。記憶によれば、立ち退き交渉には瀬戸弁護士は一度も出てこなかった。二人の内、常に交渉に出て来たのは稼ぎの少なそうな弁護士であった。今から想像すると3人の弁護士の内の二人は稼ぎが悪くなかったので相場の立ち退き料で解決できたと思われたが、一人の弁護士は稼ぎが悪かった様で立ち退き料を出来るだけ多く貰って退去する考えがあり、他の二人は任せた様な気がする。当社は当初に移転経費に掛かる費用方式に基づく立ち退き料を提示した。瀬戸氏の法律事務所は予想した通り借家権方式で立ち退き料を要求して来た。この為、私は現行相場より安い賃料で法律事務所は借りている状況を鑑み、借家権価格方式で算出した立ち退き料から入居時のままである賃料と現行賃料との乖離した差額を賃貸借期間の年数で複利計算して金額を差し引いた立ち退き料を提示した。この結果、最初に提示した移転費用方式の立ち退き料より低い立ち退き料になったので、我々を本当に立ち退かせたいのかと怒り心頭だった。最終的には機会損失を避けるために借家権方式の立ち退き料を支払ったが、この再開発の立退きには大半が再開発に協力するには多額の立ち退き料を支払えと言った態度での交渉であった。しかし、1社だけ、四国の海運会社の東京支社が本社の社長に立ち退きの件を報告したら当社の移転経費方式での立ち退き料で協力しなさいと言われたと話された。立派な社長さんと記憶しており、確か企業の再建などに貢献している社長と聞いた。その時に、東京支社長さんに当社の様に再開発に協力する会社が馬鹿を見ることにはならないでしょうねと言われたことが今も鮮明に記憶している。忸怩たる思いだ。倒産弁護士として評価を得た瀬戸氏だが、35年前の立ち退き料を考えると釈然としない感情が起きる。瀬戸氏日本は倒産が少ないとし、倒産後の再生を容易にした社会になれば今より素晴らしい社会になるとの考え方だが、それは大企業を見ての話としか思われない。中小企業の倒産は社員の家族が路頭に迷う例は多い。米国はノンリコースローンが多いので倒産のダメージは少ないが、日本は今でも殆んどリコースローンだ。瀬戸氏は法律家としては能力が高いのだろうが、企業家として経営に当たったことはないと思われるので、「修羅場の王」を読む限り、倒産する前を指導する法律家を評価するべきと思った次第だ。再開発時の立ち退きに一度でもあっていれば違った見方も出来るのかもいsレないが、会っていないのが残念だ。
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